仙台市交通局は、平成26年12月6日から仙台市地下鉄南北線でICカード乗車券「icsca(イクスカ)」のサービス開始を予定しています。
ICカード乗車券と言えば、JR東日本のSuica(スイカ)が知られていて、仙台地区でもJR線や仙台空港鉄道で使えるようになっています。
JR東日本のICカード乗車券Suica(スイカ)は大変便利で、
- ドリンクの自販機やコンビニ等、買い物に使える
- 大きな額のチャージができる
- クレジットカードでのオートチャージができる
- 定期券と一体にできる
- おサイフケータイ対応(モバイルSuica)
等の特徴があります。
一方、仙台市交通局・宮城交通が展開予定のICカード乗車券icsca(イクスカ)の特徴は、
- JRのSuica(スイカ)仙台エリアで使える
- バスと地下鉄の乗り継ぎで、手続きなしで乗継ポイントが貯まる
- 乗車回数や利用額に応じてポイントが貯まる
- 記名式ならば再発行できる
- 定期券と一体にできる
等の特徴があります。
サービス開始時、平成成26年12月6日の時点では、特徴のうちの3つ、ポイントと再発行、定期券一体型だけが利用可能となっています。
その他は、平成27年の地下鉄東西線開業時にバスのサービスも開始、平成28年春にJRのSuica(スイカ)仙台エリアで相互利用開始とされています。
ICカード乗車券icsca(イクスカ)はポイントが貯まる
JRのSuica(スイカ)との大きな違いは、乗車回数や運賃に応じてポイントが貯まるということです。
当月乗車回数 | ポイント率 |
1~10回目まで | 5% |
11~20回目まで | 9% |
21~30回目まで | 13% |
31~40回目まで | 17% |
41~50回目まで | 21% |
51回目以降 | 25% |
ICカード乗車券icsca(イクスカ)を定期券代わりに使う人を仮定すると、月によって日数は違いますが、週休二日制で月40回と考えることが出来ます。
月40回乗車の場合、計算すると全体のポイント率は11%になります。
しかし、現在でも10%割増の地下鉄・バスで利用できるプリペイドカード「ジョイカード」、5,000円で17%割増のバスカード(仙台市交通局)・メルシーカード(宮城交通)があり、どちらが得になるかというのは、気になる所です。
月40回乗車した場合の1乗車あたりのプリペイドカード割増額とイクスカポイントの比較(現時点の仮定です) | |||||||
地下鉄 運賃 |
バス 運賃 |
ジョイカード 割増額 |
5,000円 バスカード 割増額 |
割増 合計 |
イクスカ | 損得 | |
仙台駅前~三百人町 | 180円 | 30.6円 | 30.6円 | 19.8ポイント | -10.8 | ||
月10回以下利用の場合 180円×5%= | 9ポイント | -21.6 | |||||
地下鉄仙台駅~地下鉄薬師堂~霞の目営業所前 | 200円 | 100円 | 20円 | 17円 | 37円 | 33+20乗継ポイント | 16 |
月10回以下利用の場合 300円×5%= | 15ポイント+乗継ポイント | ||||||
地下鉄仙台駅~泉中央駅 | 300円 | 30円 | 30円 | 33ポイント | 3 | ||
月10回以下利用の場合 300円×5%= | 15ポイント | -15 | |||||
地下鉄仙台駅~地下鉄旭ヶ丘駅~オープン病院・教育センター前 | 250円 | 190円 | 25円 | 32.3円 | 57.3円 | 48.4+20乗継ポイント | 11.1 |
月10回以下利用の場合 440円×5%= | 22+乗継ポイント |
※表はバス路線再編に関する第2回市民説明会配布資料・パンフレット「イクスカ早わかりガイド地下鉄版」と「バス路線再編に関する第1回市民説明会配布資料」を元に作成しています。バスの付与ポイントは公表されていませんので、表内のポイントは地下鉄のポイント付与率を使用しています。また乗継ポイントも公表されていませんので「バス路線再編に関する第1回市民説明会配布資料」をもとに20円と仮定しています。
サービス開始時のメリットはあまりない
icsca(イクスカ)は、乗り継ぎで付与されるポイント率が高いので、地下鉄バス乗り継ぎの人はメリットがありますが、当初は地下鉄のみの利用ですので、乗継ポイントの恩恵を受ける人はいません。
地下鉄のみの利用では、定期券代わりにジョイカードを使っている人はあまり変わらないと考えられます。時々しか利用しない人はジョイカードのほうが得という結果になります。
路線バス単独利用の場合は、現在のバスカードの割増率が大きいので、プリペイドカードとicsca(イクスカ)が併用されている期間は、バスカードを使ったほうがよいという結果になります。
平成27年地下鉄東西線開業時、バス利用開始と同時にプリペイドカードの発売を停止、その約1年後には使用停止とされていますが、プリペイドカードが廃止になるまではバスカード、スキップジョイカードを使ったほうが良い場合が多そうです。
河北の記事は得に見える
河北新報の記事を見るとicsca(イクスカ)のポイントが得に見えます。
仙台市地下鉄IC乗車券イクスカ ポイント最高25% | 河北新報オンラインニュース
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201407/20140718_15014.html
これは、ひと月の乗車回数を42回と計算し、ポイント率が高い41回以上を含んでいるためです。また、ポイントから運賃として使えるように「ポイントチャージした金額にも乗車ポイントが付く」、としているためです。
河北新報の記事の内容は、間違いないと思います。
ただし、「地下鉄とバスを60分以内に乗り継いだ場合には、別途30ポイントを加算する。」の部分は、月51回以上乗車の場合ではないかと推測します。
今回書いているポイントの数字の元は、「バス路線再編に関する第1回市民説明会配布資料」の中にあるポイントの数字と、説明会での質問・返答で「そのポイントは月20日乗車した場合の数字である」というところにあります。
ポイントの計算は難しい
ジョイカード、バスカードは購入した時点から「割り増し」が付き、1回目から運賃が得になります。
icsca(イクスカ)は、乗車した翌月の10日から翌年同月末までポイントから運賃として使える「ポイントチャージ」ができます。
割り引きという意味で考えると、ジョイカード、バスカードは割り引きに比較的近いと考えられます。
一方、icsca(イクスカ)は、乗車当月と翌月9日までの割り引き(ポイント)はありません。また、乗車最終月の翌月の付与ポイントは無駄になると考えられます。
仙台市としては、乗車回数が多い人を優遇したいということですから、結果はその通りになっています。
仙台の人よりも東京の人が便利になる
平成28年春にJR東日本のSuica(スイカ)仙台エリアで相互利用開始されると、icsca(イクス カ)カード利用者よりも東京のSuica(スイカ)利用者のほうが便利になります。
JR東日本で発行しているICカード乗車券Suica(スイカ)を利用して、東京メトロの赤坂見附駅から東京駅へ。新幹線で仙台駅に着き、仙台駅のSuica(スイカ)対応自動販売機でお茶を買い、仙台市地下鉄仙台駅から勾当台公園駅へ。東京・赤坂見附から仙台・勾当台公園駅まで、新幹線を除き、すべて「Suica(スイカ)」で乗車・決済することが出来ます。
一方、icsca(イクスカ)カード利用者は、地下鉄勾当台公園から仙台駅までの利用しかできません。また、Suica(スイカ)対応自動販売機の決済もできません。
理由は、平成28年春にJR東日本のSuica(スイカ)仙台エリアで相互利用開始となっていることです。
それ以外の
- JR東日本Suica(スイカ)首都圏・新潟エリア利用
- Suica(スイカ)と相互利用している交通系ICカードの利用可能エリア利用
- Suica(スイカ)加盟店での電子マネー利用
ができないとなっています。
Suica(スイカ)仙台エリア以外は「片利用」ということで、東京のSuica(スイカ)を持っている人が仙台でできることが、icsca(イクスカ)を持っている仙台の人ができないということが発生します。
今後に期待
利便性という意味では大きな期待があるicsca(イクスカ)ですが、金銭的に得かといえば「得ではない」場合が多くあります。
利便性の部分でも、現時点の発表では他社との互換性や買い物に使えないなど、期待はずれな感じではあります。
仙台市民や仙台近郊の人はこのICカード乗車券「icsca(イクスカ)」に大きな期待をしていると思います。今後の発展を期待して待ちたいと思います。
《関連ホームページ》
仙台市交通局 ICカード乗車券icscaまもなく!!
http://www.kotsu.city.sendai.jp/icsca/index.html
プレスリリース:JR東日本 「イクスカ」と「Suica」の仙台圏における相互利用サービスを実施することに合意しました
https://www.jreast.co.jp/press/2013/20140211.pdf
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